【コンバーテック基礎知識】「張力」とは?ウェブ搬送でなぜ必要なのか
前回の「コンバーテック基礎知識」では、コンバーティングにおける「ウェブ(Web)」についてご紹介しました。
フィルム、紙、不織布、金属箔などの長く連続した材料を、ロールから繰り出し、設備の中を搬送しながら加工していく。
このウェブ搬送を理解するうえで、次に知っておきたいのが「張力(Tension)」です。
コンバーティング設備では、
「張力を上げる」
「張力が安定しない」
「低張力で搬送する」
といった言葉が頻繁に使われます。
では、この「張力」とは何なのでしょうか。
張力とは「ウェブを引っ張る力」
張力を簡単に表すと、ウェブの長手方向に加わっている引っ張る力です。
例えば、細長いテープの両端を持って左右に引っ張ると、テープには引っ張る力が加わります。
R2R(Roll-to-Roll)設備でも基本的な考え方は同じです。
巻出し側から送り出されたウェブを設備内で搬送し、巻取り側へ送る過程では、ウェブに適切な張力を与えながら搬送します。
このウェブ張力を適切に管理することが、安定したウェブ搬送の基本の一つです。
なぜウェブ搬送には張力が必要なのか?
では、ウェブをほとんど引っ張らずに搬送すると、どうなるのでしょうか。
張力が不足すると、ウェブはたるみやすくなります。
たるんだ状態では、ローラ上でウェブを安定して走行させたり、一定の位置で加工したりすることが難しくなります。
例えば、
塗工・印刷・ラミネート・スリット 等
といった工程では、加工位置やウェブの状態を安定させるためにも、適切な張力を与えながら搬送する必要があります。
これが、ウェブ搬送に張力が必要となる基本的な理由です。
張力は高ければよいわけではない
ここで重要なのが、
「張力が高い=安定して搬送できる」ではない
という点です。
ウェブは引っ張る力を受けると、その材料特性に応じて伸びます。
どの程度伸びるかは、材料の種類や厚み、幅、弾性率などによって異なります。
張力が高すぎれば、材料によっては伸びや変形につながる可能性があります。
特に薄いフィルムや金属箔などを扱う場合には、材料への負荷を考慮しながら搬送する必要があります。
一方で、張力が低すぎれば、たるみや搬送の不安定化につながります。
つまり重要なのは、
材料と工程に適した張力を設定し、それを安定して維持すること
です。
設備の中で張力はずっと同じ?
R2R設備を理解するときに、もう一つ知っておきたいのが「テンションゾーン(Tension Zone)」という考え方です。
設備全体を一本のウェブが通っていますが、すべての場所を必ず同じ張力で搬送するとは限りません。
例えば、
巻出し → 塗工 → 乾燥 → ラミネート → スリット → 巻取り
という設備では、それぞれの工程で求められる搬送条件が異なる場合があります。
そのため、駆動ローラやニップローラなどによって設備を複数の区間に分け、それぞれの区間で張力を管理することがあります。
このように張力を管理する区間をテンションゾーンと呼びます。
設備全体の張力を一つの数値だけで考えるのではなく、工程ごとにどのような張力が必要なのかを考えることがポイントです。
張力はどうやって測る?
ウェブ張力を測定する代表的な方法の一つが、ロードセルなどのセンサーを利用する方法です。
ウェブをローラに掛けると、ウェブの張力によってローラに力が加わります。
この力をセンサーで検出し、ウェブの抱き角などをもとに張力を測定します。
センサーには、ローラの軸受部に取り付けるタイプや、ローラ自体にロードセルを内蔵したタイプなどがあり、設備構成やウェブ幅、必要な測定範囲などに応じて選定されます。
張力制御を行う場合には、測定した実際の張力を設定値と比較し、その差に応じてモータやブレーキなどを調整します。
つまり、
張力を測る → 設定値と比較する → 駆動やブレーキを調整する
というフィードバック制御によって、設定した張力を維持していきます。
また、設備によってはダンサーローラを利用して張力を制御する方式もあります。
張力の測定・制御にはさまざまな方法があり、設備構成や材料、要求される精度などによって適した方式が異なります。
巻出し・巻取りではロール径が変化する
R2R設備ならではのポイントが、運転中にロール径が変化することです。
巻出し側では、材料が送り出されるにつれてロール径が小さくなります。
反対に巻取り側では、材料を巻き取るにつれてロール径が大きくなります。
ここで関係してくるのが、ウェブ張力・ロール半径・トルクです。
ロール外周に作用するウェブ張力とトルクの基本的な関係は、単純化すると、
トルク = 張力 × ロール半径
と考えることができます。
つまり、同じ張力を維持しようとした場合、ロール半径が大きくなれば、それに応じて必要となるトルクも大きくなります。
例えば巻取り側では、巻取りが進むにつれてロール径が大きくなります。そのため、一定のウェブ張力を維持するには、ロール径の変化に応じてトルクを調整する必要があります。
反対に巻出し側では、材料が減るにつれてロール径が小さくなります。
このため、巻出し・巻取りでは運転中のロール径の変化を考慮した張力制御が重要になります。
ただし、これは基本的な関係を単純化したものです。
実際の設備では、ロールの慣性や軸受などの摩擦、モータやブレーキの特性、加速・減速なども関係します。
そのため、実機の張力制御では、こうした要素も含めて制御する必要があります。
張力を理解するとウェブ搬送が見えてくる
コンバーティング設備では、
「シワが発生する」
「ウェブが蛇行する」
「巻取りが安定しない」
といったさまざまな問題が発生します。
もちろん、これらの問題がすべて張力だけで決まるわけではありません。
ローラのアライメント、材料特性、摩擦、搬送速度、巻取り条件など、さまざまな要素が関係します。
しかし、トラブルを考えるときに、
「そのときウェブにどのような力がかかっているのか」
という視点を持つことは重要です。
張力は、ウェブハンドリングを理解するための基本となる要素の一つです。
前回の「ウェブとは?」に続いて「張力とは?」を理解しておくことで、今後の張力制御、ダンサーローラ、蛇行、巻出し・巻取りといったテーマも理解しやすくなります。
参考資料
・Erhardt+Leimer「ウェブテンション測定・制御システム」
https://www.erhardt-leimer.com/jp/ja/製品/測定技術/ウェブテンション測定・制御システム.html
・Sensors, Experimental Validation of High Precision Web Handling for a Two-Actuator-Based Roll-to-Roll System
https://www.mdpi.com/1424-8220/22/8/2917