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2026.10.21
KCS TECH COLUMN

コロナ処理後なのに塗工ムラが出る?フィルムの濡れ性を工程で切り分ける方法

「コロナ処理をしているのに、塗液が部分的にはじかれる」「同じ処理条件でも、ロットによって塗工状態が変わる」。機能性フィルムや電子材料の製造現場では、こうした問題が起こります。

塗工ムラが発生すると、処理出力を上げたくなるかもしれません。しかし、原因は基材表面だけでなく、塗液の性質、保管状態、搬送条件、処理後の時間経過などにもあります。

今回は、濡れ不良を工程ごとに切り分ける考え方を整理します。

まず「濡れ不良」と「密着不良」を分ける

濡れ不良は、塗工時に液が均一に広がらず、はじきや部分的な未塗工が生じる状態です。

一方、密着不良は、乾燥・硬化後に塗膜が剥がれやすい状態を指します。

両者は関係しますが、同じ現象ではありません。

塗液が均一に広がっていても、界面の化学的相互作用や乾燥・硬化条件によって剥離する場合があります。

反対に、塗工直後の模様がすべて表面改質の不足によるものとも限りません。

まず、異常が「塗工直後」「乾燥中」「乾燥後」のどこで見えるかを記録することが出発点です。

ダイン値が合格でも安心できない理由

フィルムの濡れ性を管理する際、試験液やダインペンによる「ぬれ張力」の測定が広く用いられています。

ただし、ぬれ張力は特定の試験液に対する表面の挙動を評価する指標であり、実際の塗液の濡れ広がりや、完成塗膜の接着強度を直接保証する値ではありません。

国際規格ISO 8296:2003やASTM D2578-23でも、ぬれ張力だけではインキ・塗膜・接着剤の密着性を十分に判断できないことが示されています[1][2]。

合否の数値だけを追うのではなく、実塗液による濡れの観察や、必要に応じた接触角・密着性評価を組み合わせることが重要です。

また、同じダイン値でも測定者、試験液の状態、表面の汚れなどで判断がぶれることがあります。測定方法と判定条件を統一し、同じ材料で比較できる記録を残します。

処理直後は良好でも、塗工前に変化する

コロナ処理は、樹脂フィルムの表面状態を変え、濡れ性や密着性の改善を図る方法です。

しかし、処理の効果が永久に続くわけではありません。

時間経過に伴う表面状態の変化、添加剤の表面への移動、保管中の汚染、温湿度条件などによって、測定されるぬれ張力が低下することがあります。

表面処理装置メーカーの技術資料でも、処理から加工までの時間や保管環境の管理が重要とされています[3][4]。

このため、入荷時の試験結果が良好でも、塗工直前の状態まで保証されるわけではありません。

長期間保管したロール、開封後のロール、処理直後の試験片を同一条件で比較すると、原因の候補を絞り込めます。

まず確認したい「4つの位置・時間」

① 基材の入荷時

表裏、ロット、保管期間、包装状態を確認します。

両面処理品か片面処理品か、塗工面を取り違えていないかも重要です。

② 表面処理直後

処理電力、ライン速度、処理幅、電極やロールの状態を記録します。

同じ出力でも速度や幅が変われば、単位面積当たりの処理条件は変わります。

③ 塗工直前

処理からの経過時間、異物・油分付着、搬送ロールとの接触、作業者による接触を確認します。

可能であれば幅方向の中央・両端も比較します。

④ 塗工・乾燥後

塗液の表面張力、粘度、供給状態、塗工速度、乾燥条件を確認します。

乾燥後の剥離が主症状なら、濡れ性だけでなく界面と硬化状態を評価します。

処理出力を上げる前に、条件を一つずつ変える

処理エネルギーを増やせば、必ず不具合が解消するわけではありません。

材料や機能層によっては、過度な処理で別の不具合が生じる可能性もあります。

まず材料の適用条件を確認し、処理出力・ライン速度・保管時間・塗液条件の変更を分けて試験します。

特にロット差が大きい場合は、

  • 同一ロールの処理直後と塗工直前
  • 同一塗液で異なるフィルム
  • 同一フィルムで異なる塗液

といった比較が有効です。

処理条件の調整だけでなく、処理工程と塗工工程の距離を短くすることや、工程内で再処理を検討することもあります[3]。

ただし、適否は材料と製品仕様により判断します。

まとめ

コロナ処理後の塗工ムラは、「ダイン値が低いから」と単純には結論づけられません。

濡れ不良と密着不良を区別し、入荷時・処理直後・塗工直前・乾燥後という時系列で状態を比較することが、再現性のある改善につながります。

K Converting Solutionsでは、塗工・乾燥工程を含む設備の新規製作や既存設備の改造について相談を承っています。

工程条件を見直す際には、材料・塗液・設備の情報を整理するところからご相談ください。

参考資料

  1. ISO 8296:2003 — Plastics, Film and sheeting, Determination of wetting tension
  2. ASTM D2578 — Standard Test Method for Wetting Tension of Polyethylene and Polypropylene Films
  3. Enercon Industries — Corona Treatment Technical Information
  4. Vetaphone — Corona Treatment Technical Information