フィルム搬送の静電気トラブル|帯電・除電位置と対策の考え方
フィルムの製造・加工工程では、静電気によるトラブルが品質や生産性に影響することがあります。
例えば、フィルム表面への異物付着、搬送ロールへの貼り付き、スリット工程での切りくずの付着などです。
静電気対策として除電器を設置していても、十分な効果が得られない場合があります。
その原因の一つは、静電気が発生する場所と、除電している場所が適切に対応していないことです。
今回は、フィルム搬送中に静電気が発生する仕組みと、除電方式の種類、除電器の設置位置、トラブル改善に向けた確認ポイントについて解説します。
フィルム搬送中になぜ静電気が発生するのか?
フィルムは、搬送ロールとの接触・剥離や、保護フィルムの剥離などによって帯電することがあります。
異なる材料が接触した後に離れると、材料間で電荷の移動が起こり、一方または両方の表面に電荷が残る場合があります。
これが、フィルム搬送工程で見られる帯電の主な要因の一つです。
特に樹脂フィルムは電気を通しにくい材料が多く、発生した電荷が表面に残りやすい性質があります。
帯電の程度は、フィルムの材質や表面状態、搬送速度、接触・剥離条件、湿度などによって変化します。
また、フィルムが搬送ロールから離れる位置や、巻出し時にフィルム同士が剥離する位置では、帯電状態が変化する場合があります。
静電気によって起こる主なトラブル
フィルム搬送中の静電気は、さまざまな工程不良につながる可能性があります。
① 異物・粉じんの付着
帯電したフィルム表面には、周囲の粉じんや微細な異物が引き寄せられる場合があります。
特に光学フィルムや電子材料など、表面品質が重視される製品では、微小な異物の付着が品質問題につながります。
② フィルムの貼り付き
帯電状態によっては、フィルム同士や周辺部材との間に静電気力が働き、搬送や剥離が不安定になる場合があります。
③ スリット・巻取り工程への影響
スリット工程で発生した切りくずがフィルムに付着したり、巻取り時にフィルム同士が貼り付いたりする場合があります。
④ 静電気放電
帯電量や周囲の条件によっては、静電気放電が発生することもあります。
静電気放電は、電子部品への影響や作業者の不快感につながるほか、可燃性溶剤などを扱う工程では安全面からも注意が必要です。
静電気を除去する方法にはどのような種類がある?
フィルム搬送工程で使用される除電方式には、いくつかの種類があります。
代表的なものとして、電源を使用してイオンを発生させる方式と、外部電源を使用しないパッシブ式の除電方式があります。
① 電源を使用する除電方式
高電圧を利用してイオンを発生させ、帯電したフィルム表面の電荷を中和する方式です。
バー型の除電器などがあり、フィルム搬送ラインのさまざまな工程で使用されています。
除電性能は、機種、設置距離、搬送速度、帯電状態などによって異なります。
② パッシブ式の除電方式
導電性の微細繊維などを用い、帯電体が形成する電界を利用して除電を行う方式です。
パッシブ式の除電ロープは、外部電源を必要とせず、適切に接地することでフィルム表面の静電気を低減することを目的とした製品です。
比較的簡易に設置できる一方、除電効果は帯電状態、設置位置、フィルムとの距離、接地状態などによって異なります。
また、電源を使用しないからといって、すべての工程で十分な除電性能が得られるわけではありません。
使用にあたっては対象工程の条件を確認し、設置前後の帯電状態を測定することが重要です。
なお、可燃性溶剤を扱う工程などでは、除電方式の選定に加え、設備全体の静電気安全対策を検討する必要があります。
除電器はどこに設置すればよいのか?
静電気対策では、除電器の能力だけでなく、設置位置が重要になります。
例えば、巻出し部で発生した静電気を除去したい場合、巻出し後の適切な位置に除電器を設置することが考えられます。
一方、工程の入口で除電していても、その後に搬送ロールとの接触・剥離が繰り返されれば、再び帯電する可能性があります。
そのため、除電器を1か所設置すればライン全体の静電気を抑えられるとは限りません。
除電位置を検討する際には、次のような場所に注目します。
- 巻出し部: フィルム同士が剥離する位置
- 搬送部: ロールとの接触・剥離によって帯電する位置
- 保護フィルム剥離部: 剥離時に帯電が発生する位置
- スリット部: 切断くずの付着が問題となる位置
- 巻取り部: 巻取り前に帯電を抑えたい位置
ただし、最適な位置はフィルムの材質や搬送経路、設備構造によって異なります。
除電器を設置しても効果が出ない理由
除電器を設置しているにもかかわらず、静電気トラブルが改善しない場合には、複数の要因が考えられます。
① 設置位置が適切でない
帯電が発生する位置から離れすぎている場合や、除電後に再帯電する工程がある場合です。
② フィルムとの距離が適切でない
除電器には、方式や機種ごとに推奨される設置距離があります。
距離が適切でなければ、十分な除電性能を発揮できないことがあります。
③ 搬送速度と除電能力が合っていない
高速搬送では、フィルムが除電器の有効範囲を通過する時間が短くなります。
そのため、ライン速度に応じた除電能力の確認が必要です。
④ 除電器の汚れやメンテナンス不足
イオン発生部の汚れや摩耗などによって、除電性能が低下する場合があります。
⑤ 除電後に再び帯電している
除電器の直後では帯電が抑えられていても、その後の搬送ロールや剥離工程で再帯電する場合があります。
このような場合には、除電器自体の性能だけでなく、搬送経路全体を確認する必要があります。
静電気対策では「測定」が重要
静電気トラブルを改善するためには、実際の帯電状態を把握することが重要です。
例えば、非接触式の静電電位測定器を使用することで、フィルム表面の帯電状態を確認できます。
ただし、測定値はフィルムと測定器の距離、周辺の接地部材、測定位置などの影響を受けるため、測定条件を統一する必要があります。
また、測定位置を1か所に限定せず、巻出し後、主要な搬送ロール通過後、加工部の前後、巻取り前など、複数の位置で比較することが有効です。
これにより、どの工程で帯電が増加しているのか、除電後に再帯電していないかを確認しやすくなります。
なお、金属製の搬送ロールが接地されていても、絶縁性の高いフィルム表面の電荷が必ず除去されるわけではありません。
「接地しているから静電気は問題ない」と判断せず、実際の帯電状態を確認することが重要です。
設備改善時に確認したいポイント
静電気対策を見直す際には、除電器の追加だけでなく、搬送工程全体を確認することが重要です。
例えば、ライン速度を上げたことで帯電状態が変化したり、フィルム材質の変更によって従来の除電条件が適さなくなったりする場合があります。
また、ロール材質や搬送経路、保護フィルムの剥離位置などが帯電に影響することもあります。
設備改善では、まず帯電が発生する位置とトラブルが発生する位置を整理し、測定結果をもとに対策を検討することが有効です。
除電器の設置位置や方式の変更だけでなく、搬送経路や周辺設備の見直しが必要になる場合もあります。
まとめ
フィルム搬送中の静電気は、異物付着、貼り付き、スリット・巻取り不良など、さまざまなトラブルの原因となることがあります。
静電気対策では、除電器の性能だけでなく、帯電が発生する場所、除電する場所、再帯電する場所を把握することが重要です。
また、除電方式にはそれぞれ特徴があり、対象工程の条件に応じて適切な方法を選定する必要があります。
特に高速化や材料変更、設備改造を行う際には、従来の除電条件が適切かどうかを改めて確認することが重要です。
K Converting Solutionsでは、フィルム搬送設備の改造や周辺ユニットの見直しなど、製造現場の課題に応じた設備改善のご相談を承っています。
静電気対策を含む搬送工程の改善についても、お気軽にお問い合わせください。