フィルム加工のスリット方式にはどんな種類がある?スリッターの導入基準について
フィルム加工において、スリッターは欠かせない重要な機械設備です。スリッターとは、広幅のフィルムや紙、金属箔などのシート状の素材を所定の幅に裁断する装置のことを指します。スリッターを導入する際には、加工するフィルムの特性や求められる精度、生産性などを考慮する必要があります。最適なスリッターを導入することは、製造プロセス全体の効率と品質に大きな影響を与える重要な決定事項となります。
こちらでは、フィルム加工のスリット方式、スリッターの導入基準をご紹介します。
フィルム加工のスリット方式

シアーカット方式
シアーカット方式は、上刃と下刃を擦り合わせて切断する方法です。この方式は、ハサミの原理を応用したものといえます。主に厚みのあるフィルムの切断に適しており、よく使用されます。
刃の種類と角度
シアーカット方式で使用される刃は丸刃で、角度によって切断性能が異なります。上刃には様々な角度があり、主に以下の3種類が使用されます。
- 45度
- 60度
- 90度
刃の角度は、切断するフィルムの材質や厚さに応じて選択します。
シアーカット方式は適切な使用と管理を行うことで、高品質なフィルム切断を実現できる方法です。フィルムの特性や生産要件に応じて、他の切断方式と比較検討しながら最適な方式を選択することが重要です。
スコアカット方式
スコアカット方式は、フィルム加工において精密な切断を実現する方法の一つです。この方式は、丸型状の上刃を受刃ローラーに押し当てながら、その圧力で切断します。この際に用いられる上刃は、「スコア刃」「スコアカッター」と呼ばれています。
この方式は、ハサミでも切りにくいような柔らかく腰のない素材(ガーゼなど)や、厚みのあるゴム板、強靭なベルト、繊維がほつれやすい布地など、様々な特殊素材の加工に使われます。
また、薄い粘着テープのように、刃で切ると糊がはみ出してしまう素材にも向いています。スコアカットでは、糊を左右に押しのけてからベースだけを切れるため、糊が切断面からにじみにくく、巻取り後もきれいに仕上がります。ただし、刃に糊が付かないように、適切な溶剤で拭いながら回転させるといった対処が必要です。
一方で、厚紙や金属箔を重ねたような粘着素材や、ラベルのように剥離紙が付いているものは、刃に糊や細かい屑が付きやすいため、スコアカットよりも直線シアー方式が向いている場合もあります。
スコアカット方式を採用したスリッターを導入する際は、加工対象のフィルム特性や要求される精度、生産量などを総合的に考慮することが重要です。また、スコアの深さ調整機能や刃物の交換のしやすさなど、操作性やメンテナンス性にも注目しましょう。
レザーカット方式
レザーカット方式は、鋭利な刃先を材料に押し付け、刃先の微少な領域における引張破断によって材料を切断する方法です。「空中切り」または「溝切り」が主な切断方法となります。
この方式は、髭剃りのようなかみそり刃で切るイメージに近く、刃の交換が容易で、使い捨てできる刃の価格が比較的安いというメリットがあります。
レザーカット方式は、セロファンやBOPPフィルムなどの薄くて柔らかいプラスチックフィルムの切断に適しています。ただし、PETフィルムのような強靭な素材では、厚くなるほど抵抗が増え、高速で加工すると摩擦熱で刃が傷みやすくなります。特に刃が固定されている場合は、同じ部分が使われ続けるため、摩耗が早く進みます。
また、紙のような素材には不向きです。紙に含まれる顔料や塗工材が刃をすぐに摩耗させてしまうためです。
この方式は主に薄いフィルム向けですが、高速・長時間の運転には刃の材質も重要です。セラミックスや超硬合金が使われることもありますが、コストや扱いやすさの面で普及は限定的です。
フィルムの種類や要求される精度によっては、他の切断方式(シャーカットやスコアカット)と組み合わせて使用することで、より効果的な加工が可能となる場合もあります。そのため、加工対象のフィルムや生産条件に応じて、最適な切断方式を選択することが重要です。
スリッターの導入基準

加工対象フィルムの材質と厚さ
スリッターを導入する際に最も重要な要素の一つが、加工対象となるフィルムの材質と厚さです。フィルムの特性によって、適切な切断方式や刃物の選択が必要となるためです。
材質によって、フィルムの硬さや柔軟性、耐熱性などが異なります。
フィルムの厚さも重要な要素です。薄いフィルムほど切断時にしわや歪みが生じやすく、厚いフィルムは切断に高い力が必要となります。材質と厚さの組み合わせによって、適切なスリット方式を選択する必要があります。
このように、加工対象フィルムの特性を十分に理解し、それに適したスリッターを導入することが高品質な加工結果につながります。
要求される切断精度と速度
スリッターの導入において、切断精度と速度は非常に重要な要素です。これらの要求は、加工対象のフィルムや最終製品の用途によって大きく異なります。
切断精度に関しては、以下のような点を考慮する必要があります。
- 寸法精度:幅方向の寸法誤差
- エッジ品質:切断面の滑らかさや欠けの有無
- 真直度:切断ラインの直線性
切断速度については、生産性と品質のバランスを取ることが重要です。高速切断は生産効率を上げますが、精度や品質に影響を与える可能性があります。
切断精度と速度の両立には、以下の要素が重要となります。
- スリッター本体の剛性と振動制御
- 切断刃の材質と形状
- テンション制御システムの性能
- フィルム搬送システムの安定性
これらの要素を総合的に考慮し、加工対象フィルムと最終製品の要求に適したスリッターを導入することが、高品質な製品を効率的に生産するポイントとなります。
生産量と稼働時間
スリッターの導入において、生産量と稼働時間は重要な要素です。これらの要因は、企業の生産性と効率性に直接影響を与えるため、慎重に検討する必要があります。
生産量に関しては、以下の点を考慮します。
- 1日あたりの必要生産量
- 季節変動や需要変動への対応能力
- 将来的な生産拡大の可能性
稼働時間については、次の要素を検討します。
- 1日の稼働時間数
- 週あたりの稼働日数
- メンテナンス時間の確保
これらの要素を踏まえ、適切なスリッターを導入することが重要です。例えば、高速で大量生産が必要な場合は、連続運転に耐える高性能なスリッターが適しています。一方、少量多品種生産の場合は、段取り替えが容易で柔軟性の高いスリッターが望ましいでしょう。
メンテナンス性と耐久性
スリッターの導入において、メンテナンス性と耐久性は重要な要素です。これらの特性は、長期的な運用コストと生産効率に大きな影響を与えます。
メンテナンス性の高いスリッターは、以下の特徴を持っています。
- 部品交換が容易
- 清掃が簡単
- 定期点検が行いやすい構造
一方、耐久性に優れたスリッターは、以下の特徴を持っています。
- 高品質な材料を使用
- 摩耗に強い設計
- 安定した性能を長期間維持
メンテナンス性と耐久性を考慮する際のポイントは、以下のとおりです。
- 交換部品の入手のしやすさ
- メンテナンス頻度と所要時間
メンテナンス性と耐久性に優れたスリッターを導入することで、長期的なコスト削減と安定した生産が可能になります。また、定期的なメンテナンスと適切な使用により、スリッターの寿命を延ばし、性能を最大限に引き出すことができます。
スリッターの導入時には初期費用だけでなく、長期的な運用コストも考慮に入れることが重要です。メンテナンス性と耐久性に優れた機器を選ぶことで、突発的な故障や頻繁な部品交換を避け、安定した生産体制を維持できます。
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スリッターは大判のフィルムを細断し、所定の幅に仕上げる設備です。フィルムの種類や厚み、要求される品質によって最適なスリッターの選び方が異なります。
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